短   歌


 charakoさんが、イラストをつけてくれた作品はここからいけます。 

目次 行く年来る年 春よ来い 啓蟄
紋白蝶 蝿取り草 スイカの種
聖 夜  黄 砂 白桃
帷子雪 晩秋の足跡 ホルンの音色

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行く年来る年

行く年と来る年がありその間いつもと同じ年が暮れていく

凛とした冷たき空気に漂える吾が息ゆれる新年の朝
カフェモカとキャラメルフラッペ注文しスターバックスの正月やすみ
カレンダー 一枚一枚捲りして見抜いたように また年が明け 
白き雪早朝に積もりおり君と別れし夢の辺りで
初詣隣の君と願い事同じであるかと勘ぐる時 
昼の月アパートの上飛行機がツーっと通り抜けた窓の外 
雪の粒子に触れようとそっと手を出す君の心に触れるみたいに
絡まりし足と腕とを解くときに君は宇宙のブラックホール 
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春 よ 来 い


散歩して土手に腰かけ手をつくともう春だよと土筆がこたえ  
二人して話し明かせば見上げたる天井の波ざわめき立つる 
別れとは思いもよらぬあの時の普段といった間に潜みおり 
どこまでも伽藍と広がる青空が吾が心さえ虚しさに変え 
懐かしき昔の事を思い出すPCキーAとRの間を見して 
打ち出され今日は暇なの宛先不明ネットワークのプリンターから 
チロチロと命焼きつつ悲しみを吐き出しつつも吾が汽車は行く 
横顔で煙草を摘む指先に感じ始めしやがて来る春 
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啓  蟄 

 

寝転びし窓の外には白き雲深呼吸して胸に吸い込み

今日届く快気祝いの敷きマット命とどめし娑婆の世界と
とりあえずまだ容量はあるけれど貴方やっぱりアンインストール
春の陽を存分に浴び脇をすり抜ける自転車ありし 啓蟄
ライスカレ−口に突っ込む三日目にカレ−強化週間という同僚
おみあげに君に買ってた赤ワインコルクの栓がきつくなりおり  
やがて来る素に戻りしの日のために今より日記飾り付けたる
京都路をチャリンココギャルの牛若丸つっ走る雨上がり    
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    紋  白  蝶

 

朝もやの東寺の道ジョギングすれば摺れ違いし弘法大師

 とろりとろりの朝ぼらけ原付またぐ僧侶行く 相国寺
 港の丘の大佛次郎よく見れば吾とよく似た
 童話から這い出したあの狼が潜む気配の霧の街角
おぼろげに窓を流れる五月雨が心の中に溜る夕暮れ 
 日向にて蒲団を干して眩しき光る白きシーツに春がやどりし
 優しさが形になっていく過程プランターにも種を撒きおり
 家を出る後三分で鏡見る今日の一日占うように
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蝿とり草

誕生日君の笑顔と優しさに千円ワイン乾杯は白 
先週買ったハエトリソウが餌を捕り閉じた口見て三日経ち
昼休み焼ける炎天行き来する白球にある心の軌道
三ヶ月声も聞かぬもカーテンに君のバジルの香りが残り
どう見ても言い訳なのに聞き入れるそんな自分に言い訳をする
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スイカの種

 

冷風に夢をさまして下車すれば何処までも絵はがきの中この上高地 
ヒロシマの被爆式典ラジオよりあの日の夏の蝉時雨 
「おりゃー」っと声を張り上げ殴りたい 僕を包んだ今日という日を
扇風機に鼻先つけて子供らは声を震わし笑うひととき 
吹き出したスイカの種がヘラヘラと笑ったような縁側  
 笑い声見知らぬ人の笑い声今日は二人で落語聞きおり
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聖 夜

寒空を見上げる人も寝てる人にも平等に降る流星群 
みかん剥き明日の予定話しつつ耳で見ている水曜の情事 
恒例の同窓会で君の言う「変わらないな」の言葉の変化 

三日月を伴走にして走りおり雑念さえもエネルギーに換え

 幸せと吾をあらわに区別する 明日になればクリスマスイブ
「ハイケイ、サンタ殿」こんな具合に書き出してみた今日のメール 
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 黄 砂 

                                

喜びや切なさをみな加工してビーズに変えてしまう君とは
一本の線のネットで行き来する白きボールは誰が放った
ホワイトデーバラの花束食卓で突いてみてる言葉のかわりに
出来るだけ近くだけ見て過ごそうと シャツを捲って決めた日の午後
うだうだとしけった心一振りで出会い頭の大飛球飛ぶ
どうしても会いたい気持その影に潜んでおりし疲労困憊
笑いつつちびまる子見て気付きしは吾れ友蔵によく似ていると
絶望の素をたどれば希望だと言う君の色深い藍なり 

 

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白  桃  
あの時の「もしも」と言った瞬間に副詞から現在進行形となり  
 まゆつばな君の発する光線が窓にぶつかるサンセット
 こんな日に忘れかけてた約束とモカフラペチーノの味脳裏に浮かび
ハリポタの3巻読む黄昏に君が残した柿ピーをかじる 
ベッカムと同じ形の髪型でキャッチボールする君の無邪気さ  
 ごま煎餅と海苔煎餅とどっち好き?それと同じか俺とあいつは
 君の襟微かに忍ぶおとといの白桃という紅茶の香り
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        帷 子 雪

 

始まりの十数秒の沈黙が短くもあり永遠でもあり  
振り上げしこの拳さえ空しさの心のきしみ君に届かず
塞がった言葉の中の欠片から日向のようなところを探す  
理屈ではないのだろうと窓の外家路に向かう人の群れ見て 
秋の朝足で布団を探りつつだるい光を窓に眺める 
沈丁花その香りとかあの道や君はどうして覚えておりぬ 
ガザガザと落ち葉の声が散り積もる伽藍としてるテーブルの上に
今日言った半分が嘘 半分が見栄と悪口 至福の日・・・かも
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晩秋の足跡

ヨーカドーのビニール袋に透けている 笑い声とか温かさとか 
探し当てし「あづまや」の地下 ビフテキにフォーク突き刺す11月の昼 
晩秋の薄い日差しを踏みしめた ランニングする君の足跡 
「蠢」という字に潜みけむ何気なし金曜の君の日記に 
陰口を煙と共に吸引するは 喫煙室の煙浄化装置 
早朝に目覚めて君に触れてみる 生まれしばかりの卵のように 
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ホルンの音色
 

 夢の中 目を閉じて聞く交響曲ホルンの音を探しあてる
 中華街君が買った粥パック忘れかけた今日食卓に並ぶ 
 我が鼻に充ててみるかなようじやの君が土産の油紙
一本の傘で寄り添うとなりの肩が少し近づく水たまり
緊張で触角か下手のひらがブレーキとともに記憶に変る
真夜中のベットの中でフライになりし君の心にグローブ開く
獅子座より星の粒子の青き奇跡が君の星座ににたどり着く夜
コンパスで描き2円の重複に愛をかたりし醜がみえたり
我が心餌につけよし釣り糸を地球の芯に垂れ落とす
不用意に近づくにつれ君という引力圏に迷い込む
 この時間を止める覚悟で重ねたる君の唇柔らかき小夜

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